O脚のもたらす作用とは?

O脚と歩行動作の荷重バランス

O脚矯正は、たんに外観や美容の観点からだけでなく、さまざまな症状の改善、健康の維持増進の観点からも大きな意味を持っています。とくに、骨盤の歪みをただす02で紹介した骨盤の矯正、外反拇趾と足裏アーチで紹介した足裏アーチの矯正と併用することで、低体温の方の代謝を高めたり、高齢の方の歩行の問題を改善するなどの側面も持っています。

なぜO脚矯正をおこなうとよいのでしょう。

じつは数ある動物のなかで、膝を完全に伸ばして使う生き物は、ゾウのように身体の重い生き物くらいしかありません。わたしたち人類のように、膝を伸ばした姿勢をとる生き物は、きわめて珍しいのです。実際にどのようなときに膝が伸びているのか、立ち入って詳しく見てみることにしましょう。

わたしたち人類は、数ある哺乳類のなかでもかなり大型の生き物です。もちろん、アフリカに生息する哺乳類のなかにはもっとずっと大型のものもすくなくありませんが、膝にかかる荷重や衝撃の大きさという点で見ると、人類はかなり大きな衝撃を膝で受けとめる動物です。

まっすぐに伸びた足は、運動の効率という観点から見るとかならずしも有利ではありません。支点作用点力点が一直線にならぶため力が発揮しにくいのです。力が発揮しにくいということは、衝撃を吸収するうえでも不利です。骨格や靭帯などの関節に直接大きな衝撃がかかりやすいのです。

歩行時の膝関節の伸展 通常の歩行動作では、ほぼ半分の時間を片足ですごします。しかし、着地するときも、体重が移動してゆくときも、膝は曲がった状態にあります。これは、いま述べてきた理由から考えるとよく理解できます。唯一、地面をける瞬間だけ、完全に膝が伸びた状態になります。このとき膝は、大腿部で作られたエネルギーをストレートに地面に伝える役割をはたします。O脚の問題とは、運動エネルギーをどのように地面に伝えるかという問題でもあるのです。

そもそもわたしたちの足は、かなり内股ぎみに作られています。左右の足を交互に繰り出しながら上体の安定性を生み出すうえで、このことはとても重要な意味を持っています。このため身体の抗重力線は、骨格によってではなく、内股の筋肉(長内転筋など)によって保持される構造になっているのです。

地面をける瞬間、背骨には本来、地面から突き上げるような力が加わります。この力が、背骨を固定する靭帯に大きな弾性エネルギーを与えます。その結果、背骨周辺の組織の代謝が活性化され、神経機能が高められるのです。

O脚になると、このような本来の内股構造によって生まれる上半身と下半身のエネルギーの連動性がたたれます。上半身を硬くして、下半身だけで歩くような歩行動作になってしまうのです。その背景には、背骨の可動性の低下や骨盤周囲のアンバランスがあります。

O脚矯正の考え方

下肢の骨格構造と重心線

O脚に関与する関節の検査 しかし、そもそもの内股構造を保持するためには条件があります。とくに、O脚の傾向のある方は、次のような検査をしてみてください。

立った姿勢から膝をまげ、両膝の内側を密着させてください。こうすりと、だれでも両方の膝をあわせることが出来ます。O脚は、この状態から膝や腰を伸ばしてゆく過程であらわれてきます。つまり直立姿勢を保つための運動が生じているのです。

つぎに、膝を曲げ両膝を密着させた状態から、今度は膝が離れないように注意しながらゆっくり膝と腰を伸ばしてゆきましょう。こうすると伸ばすにつれて、次第に苦しくなる部位があると思います。まず腰の下側の領域です。もうひとつは股関節です。両膝の密着を解くと、腰の下側と股関節の苦しさがなくなり、腰をまっすぐに伸ばせるはずです。これこそが直立姿勢を制限している問題の箇所なのです。

膝に着目してみると、このとき左右の膝に2〜3cmの隙間が開き、どうじに膝のお皿が外側を向くはずです。O脚は、これらの部位の動きが低下することによって生じています。両膝が離れないようにベルトで固定して膝を伸ばすと、骨盤の後ろやお尻の下面、足首の外側などに強い張力が発生します。O脚矯正に抵抗する筋群や骨格・関節がどこにあるのかよくわかります。

膝は、完全に伸ばすと両脇にある側副靱帯、関節内部にある前縦靱帯に張力がかかる構造になっています。この時、脛は太ももに対して5°程度外側に回旋(外旋)するように出来ています(locking mechanism現象)。

この膝関節の外旋運動ができなくなると、わたしたたちは、下肢の内股構造をたもったまま歩くことができなくなります。じつはO脚は、膝関節の外旋運動なしに歩行動作を続けるためにやむをえず生じてしまう運動なのです。

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