豊かな食生活と自律神経

細胞も構造 わたしたちの身体は、細胞の活動によって支えられています。細胞の活動には、生命活動の姿が凝縮されています。自律神経の役割を理解するうえで、このことを理解しておくことが大切です。

人間の体内にはさまざまな対応の細胞がありますが、細胞の持っている基本的な性質は共通です。細胞のレベルで見ると、人間も動物も、より原始的な生き物ですら、外見上は大きな違いはありません。これは、細胞のもつ基本的な性質が共通しているからなのです。

ほとんどの生き物は、形こそちがえ呼吸の能力、消化吸収の能力、タンパク質を合成する能力、アンモニアを排泄する能力、血液を循環させる能力、生殖の能力を持っています。昆虫やイカ、ナマコ、ウニ、トカゲやカエルにいたるまで、動物といわれる生き物はみなそのための専門の器官を備えています。

肺、顎、胃や腸、肝臓、腎臓、心臓、精巣と卵巣などの器官は、これらすべての生き物に備わっています。その性質はほとんど変わりません。なぜ姿も形も違う多様な生き物の内部に、これほどまで共通の仕組みが備わっているのでしょう?

これは細胞のもっている基本的な性質と関わりがあります。姿形が違っていても、これらの生き物を構成する細胞の基本的な性質は共通です。これらの内臓の機能は、細胞の生存にとって不可欠ないごとであり、単細胞の生き物であればたった一つの細胞のなかですべてこなしている基本的な仕事に他ならないのです。

腹壁にあらわれるさまざまな表情は、わたしたちの心身の状態を如実に反映しています。漢方では、胸脇苦満といえば肝の証で、肝臓のある右季肋部が硬く強ばりを感じ、門脈のうっ帯から陰部の乾燥や痔瘻、便秘や下痢、また迷走神経にそった頚部の緊張などを伴うものですが(腹部静脈系の大切な働きを参照)、そのほかにも多くのことを教えてくれます。 上腹部には胃があります。胃の表面は、通常は、軟式テニスポール表面のような、柔らかな薄い膜のように感じられます。しかし、夏など冷たいものをお腹に入れるとすぐにごわごわした硬いしわのようなものがあらわれてきます。 寒さが厳しい冬には胃の表面が硬くなっている方が多く、苦しくて仕事を休むという方もいらっしゃいます。冷えによる反応が表れやすいのも上腹部の特徴なのです。 そういったこととは関わりなく上腹部がごわごわと硬いたちの方もいらっしゃいます。これは神経の細やかな人の特徴で、人が一考えるところを、たえず十考えてしまうような繊細な方の場合です。 一見豪放磊落に見えるようでも、じつは神経質に細やかな心配りを欠かさない、止めることができないといった方の場合、胃壁を見るとスジ状の強ばりがあらわれています。他の何よりも頭脳系を鎮静するような調整が求められます。 胃から下ったところにあるのが十二指腸です。十二指腸は通常、大腸の横行結腸(ガスなどでしばしば移動します)の下にあり、腹壁から見るとかなり奥の方になります。十二指腸はタンパク質や脂質の消化をおこなう場所ですが、とくに胆汁や膵液によって胃酸を中和し、消化管を胃液の酸から守ることが重要な役割です。 十二指腸に生ずる強ばりや違和感は、ほとんどの場合、胃酸による荒れや炎症でだと考えられます。酸が十分に中和されないと胃の出口(幽門)は口を閉ざして開かなくなります。このような時、食道からの入り口(噴門)が開いてしまうという反射があって、胸焼けを生ずることも少なくありません。 脂っこいものが胃にもたれたとか、食べたものが胃につかえて降りていかないなどといった症状があらわれてきます。 このような時は、背部の筋肉の盛り上がりを叩くとお腹の方に響きを感じやすく、肘が冷えたり、膝の裏が痛かったり、とくに油っこいものに弱い方の場合、右半身にさまざまな表情(頭痛・肩痛・腰痛・股関節痛など)があらわれてくる傾向があります。 関連する神経系、とくに上腰部(腰椎2番部)と下肢にそってツーッとするような興奮があらわれますから、これを鎮静しなければなりません。大腸のあたりは、インフルエンザ・風邪などの感染症で硬くなってくる傾向があります。これらの感染による発熱が腸熱であることを示しているのかも知れません。 下腹部の緊張で多いのは、過敏性大腸とって仕事やストレスなど、外的な事象に影響されて便秘や下痢を引き起こしやすいタイプです。腸腰筋の緊張(デスクワークと腰痛、やっかいな腰痛01参照)では、硬さはあっても放散痛のような響きがありませんから、区別しなければなりません。