腸と肝臓のふか〜い関係



頭頚部の状態は腹部の内臓の働きから密接な影響をうけています。腹部で生じた緊張や不調を頭頚部につたえる神経系が頭頚部の症状の発生に重要な役割をはたしているのです。とくに重要なのが横隔神経と迷走神経です。本来は脳から腹部の内臓へ命令を伝達する役割をもった神経なのですが、そのなかに、内臓からの情報をフィートバックする逆向きの経路があるのです。 横隔神経は横隔膜の運動をコントロールする神経です。横隔膜はごく一般的な筋肉で、長さの変化に鋭敏に反応する性質もっています。肋骨の下側のラインにぐるりと付着して、お腹のまん中に向かって収縮します。このため、肋骨の縁をさすると横隔神経の状態を読み取ることができます。 横隔膜は脊柱周辺で大腰筋の筋膜と重なりあうように付着しています。大腰筋は歩行動作で、大腿部を持ち上げるとても大切な筋肉で、荷重のかたよりに大きな役割をはたします。荷重の移動と腹腔臓器の働きとは密接に結びついているのです。 一方、左右の迷走神経の分布はすこし変わっています。 人類をふくめ、哺乳動物の消化管は、発生の過程で右回りに90°回転します。胃の前面にあった肝臓は身体の右側に、胃の後面にあった脾臓は身体の左側に移動します。これは、心臓の右半分を肺循環にあて、多くの酸素を取り込むことにより、体細胞の代謝を高く保とうとするためです。 哺乳動物の胎生の能力は、このようにして生み出されているのです。 動脈血の免疫的な問題を処理する脾臓は身体の左側に、静脈血の吸収栄養素を処理する肝臓は身体の右側に移動し、体内に左右非対称な内臓の分布が生じたのです。 このようなことから、頭頚部の症状に対して、次のような点にとくに注意を払いながら施術をすすめます。

  • 朝、食欲はあるかどうか?
  • 胸焼けの徴候はないかどうか?
  • 食後に食べ物が胃から降りていかないなどの徴候はないか?
  • 同じく食後に極端に身体がだるくならないか?
  • 油物を食べると胸焼けがしやすいかどうか?
  • 便秘や下痢をくり返す傾向はないか?
  • 痔瘻や陰部の感染症の徴候はないかどうか?
  • 午後になって視力の低下などが生じないか?
  • お腹を下した後、肛門に滲みることはないかどうか?
今日、テレビなどをつうじてあまりに膨大な健康情報が氾濫しています。大切なことは、ご自分の身体にあった等身大の健康法をしっかりと見つめていただくことだと思っています。施術にあたっては、内臓も筋肉や関節のコリ・こわばりが密接に結びついていることをご理解頂きながら、生活改善の提案もおこなっています。