さまざまな足の症状と坐骨神経

腰椎と坐骨神経

就寝中に下肢がつる。坂道で足が前にでない。下肢がだるい。むくむ。強い倦怠感がある。つま先が下がってすぐにものにつまずく(鶏歩)。

こういった症状の多くは神経症状です。これらの症状の背景にはなんらかの神経の緊張があります。

このような足の症状に関係しているのが、坐骨神経です(右図参照)。

坐骨神経は腰椎3番〜仙椎2番の腰椎から発して骨盤の内側をとおり、あぐらのときに地面に接する坐骨のすぐ横をとおって、太ももの後面をとおり膝の裏側の方へと連なるとても大きな神経です。

坐骨神経と臀部の筋肉の関係01 坐骨のすぐ横をとおることからこの名称があります。脛や足の甲、足底の神経も、すべてこの坐骨神経から枝分かれしたものです。

坐骨神経に緊張が生ずると、膝の裏に強い張りが出てきます。指で探ると硬く筋張って、痛みを感じます。立っているとお尻が張ってきたり、歩くと太ももの後ろ側が痛くなったり、足が疲れやすい状態になります。

このような症状は、さまざまなげんいんによって坐骨神経が圧迫されて生じます。実際に圧迫が起こっている場所ではなく、神経の分布する末梢の経路にそって症状があらわれるのが特徴です。

症状を改善をはかるためには、患部に対する施術よりも、どこで神経に対する圧迫が生じているかを把握することが大切です。患部を刺激すると、その場は多少ラクになった気がしますが、根本的に症状が取り除かれることはありません。

坐骨神経と臀部の筋肉の関係02 神経を圧迫する要因として、関節の異常や筋肉の強い緊張、腰椎の椎間板ヘルニアなどがあります。椎間板ヘルニア自体は、手による施術で改善されるわけではありませんが、腰椎の関節の運動制限を取り除くことで、多くの場合、症状の改善がおこります。腰椎の関節で生じた神経根症が何らかの形で関係しているものが多いと考えています。まずこの点を正確に把握できることが大切です。

神経根症は神経が背骨の関節を通り抜ける部位(椎間孔)で圧迫されて痛みを生ずるものです。大切な姿勢の影響で、頚椎を例に紹介していますので参考にしてください。神経根症が発生すると、椎間孔が狭くなるような姿勢や動作をとると症状がきつくなったり痛みが出るのが特徴です。

腰を反らすと痛みがある、身体を右側に倒したり、右側にねじると右側の腰が痛い、左側に倒したり左側にねじると左側の腰が痛い(同じ側が痛い)といった場合、神経根症の疑いがあります。

脊柱のなかでも坐骨神経の出てくる下部の腰椎は、とても大きな負担を受けている部位なので、加齢とともにほとんどの方がなんらかの神経根症を起こしてきます。とくに姿勢が生み出す神経症状で紹介したstage03タイプの人はその代表です。

坐骨神経痛では原因部位をしっかり調整

坐骨神経痛と骨盤のゆがみ

理論的には、左右いずれの側にも神経根症は生ずる可能性があります。しかし、、実際上は利き手利き足の影響を強く受けます。左下肢に生じた坐骨神経痛と右下肢に生じた坐骨神経痛は、発生部位にそれぞれ特有の傾向を持っているのです。

骨盤の歪みをただす01で紹介したように、言語や文化に関係なく95%の人は、右利きで右側により多く荷重しながら生活しています。右腰には身体の重心を引き戻そうとす力がたえず発生しています。このため、腰椎4番と骨盤との間には強く固着が発生しがちです(右図参照)。

右荷重と坐骨神経痛の関係 その結果、背骨と骨盤の間に楔形に挟まった腰椎5番は、左前方に押し出されるように変位し、左側の椎間孔で神経根症を起こしやすいのです。

神経根症が起こると坐骨神経の経路にあるさまざまな筋肉が緊張してきます(上段の図参照)。坐骨神経痛では、この神経根症を起こしている腰椎の関節調整が大きなポイントになります。

やっかいな腰痛02のところでも紹介した足を抱えて伸ばす運動は、神経根症の改善や予防に効果がありますのでぜひ実践してみてください。うまくすればこの体操だけでも膝の裏の緊張がしっかりゆるみます。

腰椎部にかかる荷重はとても大きいので系統だったアプローチが必要とされる部位です。ちょっとした関節の障害で、痛みや不安感が生じやすいのです。しかし、この点にてしっかり対処すれば大きな改善が望めます。あきらめずにぜひご相談ください。