足の関節と歩行動作

足は、身体動作のもっとも大きな動力源です。全身の筋肉の半分は足に分布しています。わたしたちの身体が持っている巨大な重みを考えると当然といえば当然です。

とくに、歩行動作のほぼ半分は片足だちになります。このとき、足の関節は身体を前方に押し出すと同時に、地面と上半身のあいだで捻じれを生じます。

股関節や膝、足関節などに生ずる痛みは、巨大な重みを支えながら生ずるこの捻じれによるものが少なくありません。まず、どのような瞬間に、強い衝撃がかかるのかをよく整理しておきましょう。

歩行動作と下肢の関節運動


歩行動作においては、とくに着地して身体の重量を受け止める瞬間と、他方の足が浮き上がって片足立ちになる瞬間、そして膝を伸ばして地面をける瞬間の、3つの場面がとりわけ大きな衝撃のかかる瞬間です。

股関節膝関節足関節が、それぞれの瞬間にどのように捻じれを生じているのか理解しましょう。

股関節は、球状のしっかりした関節です。着地の瞬間には後方に、地面をける瞬間には前方に大きな衝撃がかかります。また上半身と下半身が一直線になった瞬間、反対側の下肢が地面を離れるため、身体が傾斜しないために側面に巨大な張力が発生します。

下図を見ていただくと分かるように、それぞれの瞬間で、股関節が捻じれながら強い力を生み出しているのがわかります。

歩行動作と股関節にかかる負担

膝の痛みをつくる運動ルートのかたより

人類の股関節は、四足の動物の股関節をそのまま後方に伸ばしたようなつくりになっています。したがって、足を後方にそらせばそらすほど、股関節周辺の靭帯に伸びがかかります。

問題となるのは、長時間の座位姿勢の影響です。椅子に座っているとき、多くの人は股関節を直角に曲げた状態で固定しています。とくに男性では、ある程度、膝を開いて股関節を外旋した状態においている方が多いはずです。

骨盤と大腰筋・腸骨筋 この状態は、人類の股関節にとってはもっともゆるんだ状態です。長時間にわたると、いざ伸ばそうとしても股関節がしかり後方に伸びなくなってきます。

ここで重要な役割をはたしているのが、腰部の脊柱の前側から骨盤の内側をとおって大腿骨の内側(小転子)に伸びる大腰筋です。

大腰筋は、そもそも股関節を外旋する作用を持っています。長時間のデスクワークでは、短縮して腰椎を硬くすると同時、外股傾向を助長します。外股傾向とは、股関節がしっかり捻じれないために、歩くときにつま先が外を向いてしまう傾向です。

その結果、膝関節足関節にさまざまな問題が生じてきます。

膝関節と歩行動作の関係 膝関節は、大腿骨と脛骨の間に作られる大きな関節です。身体のなかでもっとも大きな力を発揮する関節です。基本的に前後の一方向にしか動きません。このため、股関節で生じた捻じれ不足の影響がもっとも強くあらわれます。

膝関節は、歩行動作で反対側の足が浮き上がる瞬間(片足立ちになる瞬間)と、地面をけって伸びきる瞬間に強い衝撃を受けます。多くの場合、股関節の運動制限が関連していますから、両者をいったいとして整えてゆくことが必要になります。