ハードウェアとしての目の機能

毛様体筋と自律神経系

水晶体を取り囲む領域には、房水という体液が循環していて、これが硝子体を圧迫し網膜を眼球の内壁に密着する重要な役割をはたしています。水晶体の厚みをコントロールする毛様体筋は、この房水によってによって栄養されています。

房水は、目の隅角からシュレム管という管をとおって排せつされますが、この排せつ路がつまってくると眼圧が高くなってきます。緑内障は、この眼圧の亢進によってもたらされる病気です。角膜の表面を保護する涙が不足すると、雑菌などの繁殖に対する抵抗性が低下します。いわゆるドライアイという状態になってきます。

目の活動を支える自律神経系としてとくに重要なのが、三叉神経と胸椎1〜3番から上がってくる交感神経系の毛様脊髄神経路です。眼精疲労をうったえる方は、ほとんどの場合、顔のほてり、頚部の緊張、肩こり、顔の皮膚の硬化や不随意な引きつりや顔面チック、場合によっては頭痛などをともなっています。

三叉神経や胸椎1〜3番などの上胸椎部(星状神経節)の緊張は、腹部内臓の緊張や腰部の緊張などからくる全身的なストレス状態の影響を受けている場合も少なくありません。神経の緊張がゆるむと、顔面の皮膚が伸縮性を取り戻し、眼球を圧迫するとやわらかくなるのがわかります。

目が疲労している場合は、関連する筋肉群や神経支配領域の過敏を調整し、神経の緊張を取り除くことがとても大切です。頭痛や頚部の緊張、肩こりの調整を含んだ全身的な調整により、心身ともにリフレッシュして下さい。

大切な脊椎の運動機能

後頭部の筋肉と眼精疲労

目の動きを作る筋肉とは違い、頭部の安定を作り出す筋肉は、関節運動を引き起こすため、たんに休息をとるだけで疲労感が回復しない場合があります。関節の異常や変位は神経に対する圧迫を招き、このことがさらに目の疲労を推し進めるという、神経根症による負の連鎖を引き起こすのです。

とくに後頭骨と頚椎1番、2番の関節の緊張は、頭痛の原因ともなる後頭神経の圧迫をもたらします。後頭神経の圧迫による後頭部の頭重感は、寝てもさっぱり頭の重さが取れないといった重い疲労感を引き起こします。持続的な筋肉の緊張が睡眠の妨げとなり、顎の噛み締め頬の筋肉の引き連れなど、連鎖的な症状を引き起こす場合もあります。目の疲労に伴う関節運動の異常は、後頭部から下頚椎部、肩口につらなる広い領域で相互に関連しあいながら進んでくるのです。

そのような関節運動の問題の基盤には、「姿勢評価の基礎」で紹介したstage02の姿勢の乱れ蛾大きく関わっています。デスクワークなど、目を使うことが多い作業姿勢は、腰部の弾力性低下や猫背を招きやすい姿勢です。たんに目の酷使するからというだけでなく、作業姿勢そのものなかに目の疲労を誘う要因が隠れていることを理解しましょう。

眼精疲労に効果的な背骨のストレッチ ウォーキングやジョギングなど、脊柱の関節を使う運動は、姿勢の改善をつうじて、目の疲労の大きな助けになります。腰椎や骨盤、下肢の関節などもあわせて調整してゆくと、疲労のない健やかな状態を保つことができるようになります。

眼精疲労に効果的な骨盤歩き運動



















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