頭部神経系の特別な成立ち

目の毛様体をコントロールする神経系

頭部や顔面、頚部にあらわれる症状の代表的なものとして、頭痛めまい耳鳴り顎関節症眼精疲労咽頭喉頭の違和感、発語の困難などがあります。病院の検査で脳脊髄の神経学や血管系などに異常がなく、抗うつ剤や精神安定剤を処方されているという方が当院を訪ねてこられることがよくあります。

これらの症状を調整する上でとても大事なことは、頭部の筋肉や自律神経が身体の他の部位と異なる、とても重要な性質を持っているということです。

これらの部位は、発生学上、鰓部(えらぶ)とよばれます。系統発生の観点から見れば、魚類などのエラになってゆく部位で、原基となる第1〜4の鰓弓(サイキュウ)と呼ばれる部位から、口や目、耳、鼻、喉などの器官が作られてゆきます。

頭部の器官と鰓弓の関係 通常、自律神経には交感神経副交感神経の二つがあって、両者が拮抗的な働きをすると考えられています。この部位を支配する三叉神経迷走神経舌咽神経舌下神経副神経などの働きは、基本的に副交感神経の性質を持っています。

一般的には身体の休息にかかわる神経を説明されていることが多いのですが、たんに「交感神経の働きと拮抗している」、「休息のために働いている」と考えるのは大きな間違いです。実際の症状の改善のためにも、脳神経系についての正しい理解をもつことが大切です。

基本的に、脊髄から上ってくる交感神経の働きと、副交感神経的な役割を持つ脳神経の興奮を等しく鎮静するという視点を持っていることが大切なのです。



「鎮静する」のが頭部の基本

6週目の胎児における神経系の発生

大切なのは、頭頚部に点在している過敏点や、症状を再現させるような響きの部位に対する刺激です。

このようなポイントは、鰓部の器官や神経支配の広がりをふまえて、各人各様の広がりをもっており、丁寧に探り出す必要があります。

調整上、頭蓋骨や頚椎部の関節や筋肉のアンバランスに注意を払うことはもちろんですが、一番の主眼は、これらの神経的な興奮状態をしっかりと鎮静することです。

頭部の緊張がゆるみ、深いリラクゼーションとともに、症状がスーッと治まってゆくのがお分かりいただけると思います。

マッサージや他の整体院で筋肉のコリや骨格の歪みを矯正され、症状がひどくなったという例にしばしば出会います。これは実際の調整刺激が、結果的に神経を興奮させてしまっていることによって起きる現象です。

その基本には、施術上の誤りがあります。一般の整体院やカイロプラクティックでは、姿勢や脊柱のバランスの影響によって頚椎が歪むという視点で背骨の矯正がおこなわれます。もちろん、姿勢などによる力学的な影響はかならず考慮しなければならない重要な問題です。たとえば長時間にデスクワークなどによって猫背や過度の頚椎前彎が生すると上部の頚椎に緊張が生じ頭痛などを招きやすくなります。

しかし、目の使いすぎや肩こりなどから来る頭痛と生活に支障を来たしたり仕事を休まねばらなくなるような頭部の症状を、同じ視点で考えるのは誤りです。頭部の症状を改善するためには、たんに力学的な姿勢観察の視点だけでなく、脳神経系の緊張によってに頚椎が頭蓋骨に引っ張られて骨格の変位が生ずるとという視点をたえず持っておくことが必要なのです。

この部位は、筋肉や骨格系よりも神経系の鎮静に主眼をおき、的確な調整ポイントの選定をおこなうことが大切な場所なのです。

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